「約束 参」
うははははははははっ![]()
「それでね、それでね、この前カッツくんが出張の時、あたしを藤田さんの家に預けたでしょ?そこの次男、翔太君の部屋で遊んでたのね。翔太君が‘ペロ
’って呼ぶから、あたしは翔太君の方を振り向いたの、そしたら翔太君、あたしに何をしたと思う?」
「ビーフジャーキーとかクレたの?」
「とんでもナイっ
あたしにスーパーボールを投げつけてきたのーっ
」
「笑 笑 笑」
「いやいや、笑ごとじゃなくてーっ
」
「うん(笑 それでそれで?」
「あたしは愛玩犬ではあるけれど、少しは野生の血が流れているワケよ。そんなね、ドン臭いガキ・・・じゃなくて子供
が投げるスーパーボールなんて、ひょいひょい避けられちゃうワケね」
「あぁ~そうだろうねぇ~ペロって、ケッコーすばしっこいよね」
「うんうん、そうそう。翔太君が投げるスーパーボール、あたしが全部避けてしまうものだから、翔太君、悔しかったらしくて涙ぐんだのよ(ざまぁ・笑」
「ざまぁって(笑」
「でもね、なんかちょっと翔太君に悪いかなぁ~と思って・・・スーパーボールに自分から当たってあげて、痛がるフリでもしてあげようかなぁ~と思ったその時に・・・」
「思ったその時に?」
「はい、小学校から帰って来ました。翔太君の兄、デブの長男、隆太君」
「そうかぁ~帰ってきたか、デブの長男、隆太君(笑」
「翔太君、泣きながらデブの隆太君に‘お兄ちゃん
この犬、僕たちが大事にしてるポケモンのカードを噛んで歯型をつけたんだよーっ
すんげームカつく
’って言ったのよ」
「えっ?歯型?ほんとに噛んだの?」
「噛んでナイわよ
無実の罪よ
冤罪よ
恐ろしいデッチアゲよ
」
「だよねぇ~噛みグセとか、ナイもんね?」
「うん、そしたらさ、デブの隆太君があたしの両前足の脇に手を入れて、後ろから持ち上げたのーっ
今、思い出してもサムイボ出る
」
「
それで?」
「おい翔太、コイツの腹を狙って、思いっきりスーパーボールをブツけていいぞ
って」
「うわ~っ
」
「翔太のバカ、ダルビッシュ並みに振り被ってビューン
って![]()
![]()
」
「アタタタタタタっ」
「もうね、あたしのそれまでの全人(犬)生の中で、あんなに痛かった経験はナイくらいの痛みに、大きな声でキャイーーーーン
って言っちゃったわよ
カッツくん、何してんのーっ
早くあたしを助けに来てーっ
早くお迎えに来てーっ
って、泣きながら叫んだのよ?」
「そうかっ
だからオレが迎えに行った時、ペロはオドオドして、すぐオレの後ろに隠れたんだ?なんだか様子が変だったもんね、あの時」
「Yes I do. あの家に預けられるくらいだったら、いっそ公園にあたしを放して?お願いよ?公園で隠れながら、カッツくんが出張から戻って迎えに来てくれるのをジッと待っているからさ」
「うん、わかったよ(笑」
「やっぱりねぇ~子供の心が荒むのよねぇ~仮面夫婦の家は」
「工エエェェ(´д`)ェェエエ工???仮面夫婦???藤田さんのとこ???」
「知らなかったの?このマンションでは有名な話よ?あの夫婦は3年前から仮面夫婦で、奥さんはホストクラブ通い、旦那さんは会社の若い子と不倫を・・・」
「ちょっと待て
もうその話はイイや。ペロの話、怖すぎるから
」
身長約160センチ、髪には少しウェーブがかかっている
黒目がちの大きな瞳をしたこの女の子が‘ペロ’だということを私は信じた
Tシャツとトランクスを彼女に渡した直後
「とりあえず、あたしがペロだってことをカッツくんにわかって貰うからね」
ペロは私にそう言うと、私とペロしか知らない情報を語り出したのだ
ブリーダーさんの家で初めてお互いに顔を合わせた時
「どうです?人なつこいキャバリアでしょう?」
ブリーダーさんが優しくそう言ったことや、ペロを私の自宅へ連れて帰るタクシーの車内で、私と運転手さんが交わした会話
「ワンちゃんですか?可愛いですねぇ~なんていう名前ですか?」
「キャバリアという犬種ですが、まだ名前は決めていません。一応メスなのでキャバ嬢ってことで(笑」
「覚えてる?カッツくんはあたしのことを‘キャバ嬢’って言ったのよ?ねぇ、どーいうこと?(笑」
そんなこともペロは覚えていた
私は正直言うと、まったく忘れていた![]()
しかし忘れていて当然だと思う
その時の私は、人と交わす会話はすべて上の空だった
頭の中はこれからこのキャバリアと過ごす毎日を想像しては
(・∀・)ニヤニヤとした表情を顔に浮かべていたのだから(笑
「ペロは色んなことを覚えているんだね」
「覚えているのはそんなことばかりじゃないよ?部屋の電気を暗くして、カッツくんがマイルス・デイヴィスを聞きながらお酒を飲んでいる時は、何か考え込んでいる時・・・何かに悩んでいる時ってこともわかってるつもりだよ?」
「いや、単なる音楽鑑賞なんだけど?(笑」
「いいーえ違います
絶対に違います
そんな時のあたしの気持ちはね‘あたしに話してくれればいいのに、なんでも話してくれればいいのに’ってずっと思ってる」
「すべて見抜かれてたか・・・」
「そうよ
動物ナメんなっ
キャバリアなめんなっ
ペロちゃんナメんなっ
って感じよ(笑」
苦笑(笑
「ところで根本的な疑問があるんだけど、聞いていいかな?」
「どーぞどーぞっ」
「これは夢なのか?それとも現実?その・・・つまり・・・オレと話しているのは人間になったペロで・・・会話をしているって、どう考えても変だろ?」
「んーっ・・・‘夢であり現実’が答えかもね」
「ん???」
「今、カッツくんは仮死状態なのね。人間がそういう状態の時だけ、私たち動物は人間の下意識にイメージ的な働きかけをすることが出来るのよ」
「下意識へのイメージ的な働きかけ・・・つーか仮死状態(゚д゚)
死ぬの?死んじゃうの?オレ」
「アッハッハッハッハッハ」
「笑いごとじゃないよ
」
「めんごめんご、大丈夫
死なないから安心して(笑」
「めんごめんご・・・って」
「うん、本当に大丈夫だから。あたしとしても、カッツくんとこうして面と向かって話せるチャンスはもう二度とナイと思うから、カッツくんに伝えておきたいことがあるのよ。それはね、とても大切なことなの」
「とても大切なこと?」
「うん、それはね・・・」
続く・・・
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